茶道と聞くと、「正座でお茶を飲む」というイメージが強いかもしれません。しかし、正座が難しい方や、長時間の正座に抵抗がある方でも楽しめる茶道があります。それが「立礼式茶道」と「テーブル茶道」です。今回は、この2つのスタイルの魅力をご紹介します。
1. 茶道が正座をする理由と、正座の歴史
茶道で正座をする由来は,そもそも茶室が狭く,出来るだけ多くの人が茶室に入るためや、足の裏を他人に見せることが失礼にあたると考えられていた等と言われています。
実は茶道で正座をすることは,茶道が誕生したときからあった風習ではありませんでした。また千利休が生きた戦国時代は、正座ではなく胡坐や片膝を立てて座るなど、身分によって正しいとされる座り方があり、かしこまった場でも正座ではなく、それぞれの身分にあわせた座り方をしていたと言います。
正座そのものは奈良時代に中国より伝えられといいます。ただその後、正座は「危座」という「崖の上から下をのぞき込むような姿勢の座り方」と呼ばれ、一般的ではありませんでした。しかし江戸時代に入り、徳川幕府が茶会をはじめ、様々な場面で正座を取り入れ「足がしびれて、すぐに立ち上がれないことから、いきなり襲われることない」と指示しました。やがて江戸時代中頃より茶道にも正座が取り入れられ,明治時代の教育において茶道は正座で行うという風潮になり、現在に至るという少し意外な歴史があります。
現在も正座をすると足がしびれるというのは、正座が慣れていない人には一般的で、また健康上も問題はないと言われていますが、茶道を始めるにあたりハードルの1つとなっています。
2. 茶道の動きをテーブルで再現した「立礼式茶道」
「立礼式茶道」は椅子に座り,テーブルに茶道具をおいて行う茶道です。明治時代,「京都博覧会」にて海外の人にお茶を振舞うため,裏千家11代家元 玄々斎が考案しました。
裏千家,表千家等でも立礼式茶道を開催しているお教室が多くあります。立礼式茶道の特徴として,お茶をたてもてなす側とされる「亭主」の机に釜を設置する場所があります。お湯を柄杓ですくいお茶をたててふるまう…座り方のみが違うものの,その他の所作については従来の茶道とほぼ変わりません。
3. 初心者も楽しめる「テーブル茶道」
「テーブル茶道」は、より現代の暮らしの中で気軽にお茶を楽しむことが出来る形となっています。立礼式茶道と大きく違うことは,釜を使用するのではなく,お湯はポットや水筒に入れて準備したものを使用することです。
また,テーブル茶道は流派というより、教室によってスタイルが大きく変わるところも特徴の1つです。例えば,立礼式茶道に近い,茶道の所作を組み込んでいるものもあれば、所作を重視するというよりはお菓子を食べて、抹茶を自身のペースで楽しみ、終了する手軽なものもあります。教室が開催される場所も,所定の教室に限らず,眺めの良いマンションの高層階や,屋外などでも開催されるなど,テーブル茶道は非常に自由度が高く,また慣れたら誰でも自宅や好きな場所で簡単に行える茶道となっています。
4.立礼式茶道やテーブル茶道をするうえで必要なもの
テーブル作動も立礼式茶道も体験のみであれば、多くの教室は基本的に手ぶらで行くことが出来ます。もし本格的に習う場合は、各々の教室で指定された持ち物があると思います。一例としてはお茶を飲むための茶碗、茶筅、茶杓、またお菓子をいただく際に使う懐紙、楊枝などがあげられます。更にテーブル作動においては水筒やポット、お盆なども使用する教室もあります。ただ自由度の高いテーブル作動では、茶碗の代わりにサラダボウルや、現代的なデザインの茶碗を使用するなど、より個人の好きなもの、用意しやすい、使いやすいものでも構わないとする教室が多く見受けられます。
茶道を始めたいけれど、正座が苦手、できないという方は、是非上記の立礼式茶道や、気軽に生活の中でも取り組めるテーブル作動にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。