茶道から学ぶ持続可能な社会 ~お茶が教えてくれる4つのこと~

茶道から学ぶ持続可能な社会 ~お茶が教えてくれる4つのこと~
2021年10月24日 Reiko
In 芸術/文化
茶道から学ぶ持続可能な社会 ~お茶が教えてくれる4つのこと~

最近ファッション誌などのあらゆる紙面やSNSのコラム等で「サステナビリティ」という言葉を見かけるようになり、環境問題について考える時間が増えたのではないでしょうか?

以前SDGs(Sustainable Development Gols=持続可能な社会を作り上げる為の17の目標) に関して学ぶ機会がありそこで衣類に関するこんな衝撃的な事を聞きました。それは、Tシャツを一枚作るのに約2700lのお水が必要であるという事です。

なんとこのお水はは私達が3年かけて飲む水の量らしいのです。いまいちピンとこないかもしれませんが、そんなにお水が消費されているなんて、、と驚きを隠せない方も多いのではないでしょうか。

ここでふと感じたのは、茶道にはサステナブルな要素が多く含まれているということです。

昔の人々が生活の一部としてされていた茶道は、今でこそ敷居の高い手の届かない習い事と思われがちですが、実はすごく身近なもので、物を大切にする心、謙虚さ、相手を思いやることといった日本人が昔から大切にしていた美徳を教えてくれていると感じます。

環境を守りながらどう楽しんでいくかが大切になるこれからの時代、茶道が教えてくれる持続可能な社会作りの為の4つの事をお伝えします。

 

1. 物を大切にすること 質の良い物に囲まれること

茶道具

茶道を通して学んだこと。1つ目は「物を大切にする」と言うことです。

日々便利なもの、新しいものがどんどん出てくる世の中ですが、それが当たり前になり手に入った時のありがたさは一瞬、もっと便利なものを求めるようになってきています。

そしてまだ使えるのに不要になったものは簡単に捨ててしまう。それが環境問題を深刻化させる一つの大きな要因だと考えます。

お点前の準備をする際、「お道具は大切に扱う」と心掛けます。それはなぜかと言えば、茶道で使用する道具は、着物と同様世代を超えて何十年も引き継がれていくものばかりでとても貴重な品々ばかりだからです。

その時代を生き、使った人たちの温もりと共に次の世代や他の人の手に渡るのです。このように何年経っても同じ状態を保てるのは、質が良いからという理由も1つですし、大切に扱おうという想いがあるからだと思います。

もちろん質の良い物に囲まれることは簡単な事ではなくどうしても値が張ってしまう物もあるかもしれません。

でもせめて、作られる過程で多くの二酸化炭素を排出したり大量の水を使用しなければならないプラスティックや化学繊維などを使用していないか、環境に配慮した物かどうかを意識する事だけでも変わるかもしれません。

例えば洋服を購入する際は洋服のタグをチェックしてみましょう。

そこでなるべくポリエステルやアクリルといった化学繊維を含まなず、コットンや、ウールといった自然素材で作られた質の良いものを買うよう意識をすると、少しでも長く着る為にお手入れも丁寧にするようになります。

そして、洋服を買う機会を減らした事で、手に入れた時の幸福感はより高まり、1着1着に愛情が増すようになります。

 

もし破れたり壊れてしまったとしても、どうにしかして手直しを加え生まれ変わらせる。

茶道では例えばお茶碗が割れてしまった際、欠けたり割れてしまった部分に漆を使って再度くっつける修復作業を行います。

そうして出来上がった茶碗を金継ぎ茶碗と言いますが、新しい表情を見せるお茶碗に生まれ変わり、味がでて愛着が湧いてくる。そのような積み重ねが、物を大切にする精神が生まれる要因なのではないでしょうか。

 

2. 代替え品を見立てる

©︎Reiko Okada

普段お茶の道具としては使われないものを、お茶の道具として使うことがあります。

茶道ではよくある道具を本来とは違う用途、つまり他の物に見立てて使用します。例えば上の写真では日本酒を入れる徳利を花入として使用しています。

そういった使い方を茶道ではよく、「〇〇で購入した徳利を花入に見立てて生けてみました」と説明します。

本来の用途を必ずしもその用途で使う必要はない為、例えばご飯を食べるお茶碗でお茶を点てても良いのです。つまり道具を1から全て集める必要はなく、家にあるものを活用してそれらを適用させてしまうことが出来るのです。

よく焼酎や日本酒の入っていた空き瓶をラベルを剥がして綺麗に洗浄し、お花を生けて飾る事もあります。いつもとは違った雰囲気が味わえ楽しみも増えますよ!

 

新品を購入する前にふと立ち止まってみる

日常生活において全てをその通りに使用したりする必要はなく、代替え品として本来の用途とは違う使い方をすれば、何かを必ずしも買う必要もなくなるのではないのでしょうか。

買う手間も省けコストも時間も他のことに有効活用できますよね。使う用途がないからといってすぐに捨ててしまうことも減る機会が増え、ゴミの廃棄が少しでも減ることで環境に大きく配慮出来ます。

購入する前には一旦立ち止まって、「あ、これ家にある〇〇代用出来るな」という物を見つけてみましょう。

 

3. 四季の移ろいを感じ、季節のものを取り入れてみる

茶道では季節の物を楽しむ事が醍醐味です。

季節のお花を取り揃え、季節にちなんだ主菓子を用意する。それらを五感で毎年のように楽しんでいると、この虫の音、夏ももう終わりだなあとか、9月に入れば栗が美味しい季節だなあと感じるようになります。

茶道をしていると1年の中でも季節がこんなに大きな楽しみを私たちに教えてくれるのだと、日本に四季がある事に感謝の気持ちを持つようになります。

四季があるといえば、季節によって野菜や、果物、お魚など、お店の店頭で出回る食材も変わってきますよね。それも四季があることの醍醐味であるはずなのに、現代では四季の意識が薄くなってきているのでは?とふと思ってしまいます。

そしてこの事が環境問題の一つであるフードロスに影響を及ぼしているのではとも考えています。

 

近年食べる時間より働く時間が重視され、食べることが疎かになっているように感じられます。

すると食生活はどうなるかと言いますと、限られた時間の中で簡単に食べられるような、なるべく腹持ちが良いものを好むようになっていきます。

農家が拵えた旬の食材を手に取る機会が少なくなり、季節ごとに栽培されている野菜も中々手に取られなくなってしまう為、農家の方々がせっかく育てた農作物たちも廃棄せざるを得なくなりますよね。

 

国産で、旬の食材を取り入れて食生活を充実させよう

旬の食材を取り入れることには沢山のメリットがあるのです。

まず、旬の食材はその時期に取れるからこそ栄養価がとても豊富。そしてその時期に多く栽培される為、食品店などで比較的安く手に入る事が出来ます。

さらに、国産の食材を選ぶ事で、季節外れに栽培を行う為のビニール栽培や外国から輸入をする際に排出してしまうCO2の削減につながるのです。

私達消費者が旬の食材が何かを理解しそれらを楽しむこと、そして長く健康でいる為にも若いうちから栄養価の高い食材を口にすることはとても大切なこと。

是非、季節に敏感になりその時期だからこそ味わえる食べ物を楽しむよう意識して見てください。

 

4. 思いやること 心に余裕のある暮らしを

思いやること 心に余裕のある暮らしを

茶道では一期一会という言葉をとても大切にしています。

今こうして平和にお茶が楽しめる事の有り難さや、今日の為に準備してくれた亭主への感謝の気持ちを伝えるのです。

そして亭主は、心を込めてお菓子やお道具を用意し、1つ1つのお点前に思いを込めます。物に対しても、その時その空間で一緒に時間を共有する相手に対してもです。

欲のままに生きるのではなく、自身の生活を見直して相手や物に対して思いやりの気持ちを持つことは環境問題を解決する為に1番大切なことではないかと思います。

 

冒頭にもお伝えしましたが、これからは環境を守りながら日々の生活をどれだけ楽しむかが大切になっていきます。人にも動物にも自然にももっと優しくなれたら、ストレスのない少しでも豊かな社会に繋がっていくのではないでしょうか。

サステナビリティの取り組みも心に余裕があってこそ出来ることです。豊かな心で、周りの人も地球の事も思いやれる。そんな心温かい人が溢れる社会になれば良いなと願っています。

 

茶道から実践するサステナビリティ、持続可能な社会へ

ちょっと日常生活を工夫すれば、取り入れられる事ばかりだったのではないでしょうか?

そして茶道にも、心が豊かになるための持続的かつシンプルな暮らしの為のヒントが隠されている事に気付かせてくれました。

環境を守っていくことは地球を守っていくこと、私たちの子孫が不自由なく暮らせる生活を守ることに繋がります。あらゆる記事で、このまま地球温暖化が進めばこの先も人々が不自由なく暮らすことは難しくなっていくと言われています。

その為、ヨーロッパでは子供を産むことを諦める人が増えてきているのです。なぜなら、子供たちが不自由なく幸せに暮らしていける保障がないからだそうです。

持続可能な社会を作る為に、一人一人が出来ることはもっと沢山あるのではないでしょうか。

今回お伝えしたことはとても基本的な事かもしれません。

しかし、ふと自身の生活環境を振り返ってみると意外と出来ていないものなんですよね。

この記事を通してどれか1つでも意識をして、少しでも皆さんが心豊かに毎日を過ごすことのお役に立てられば良いなと思います。