五感で楽しむ、移りゆく日本の四季を表現した和菓子たち

五感で楽しむ、移りゆく日本の四季を表現した和菓子たち
2020年12月27日 鶴田 有紀
In 和菓子/スイーツ

一年を通して、さまざまな表情を見せてくれる日本の四季。花開く春から始まり、草木が生い茂る夏へ。葉が色づき始める秋は、どこか寂しくもあり美しいとも感じます。落ち葉が舞い吐息が白く染まる冬は、静かに次の季節へ歩みを進めているようです。人によって季節の移り変わりを感じる場面は違いますが、どの部分を切り取っても美しく映るでしょう。

しかし、季節を感じるものは景色だけではありません。

五感の全てを使って楽しむ和菓子は、四季の移り変わりを身近に感じることのできる素晴らしいものです。

その時期の素材を使い、味や見た目で表現する。職人の繊細な技術と感性によって生まれる日本の小さな四季「和菓子」について、季節ごとに紹介します。

 

■生命の息吹を感じさせる「春」

春は、明るく柔らかい色づかいの和菓子が多く見られます。また、香りにこだわったものも多く、目、鼻、舌と、さまざまな感覚から春の訪れを感じることができるでしょう。

今回は、春の和菓子「桜餅」を紹介します。

桜餅

塩漬けにした桜の葉にくるまれ、淡いピンク色が可愛らしい桜餅。桜の葉の香りは、春の訪れを教えてくれているかのようです。じつはこの桜餅、2種類あることをご存じでしょうか。

小麦粉と白玉粉を混ぜたクレープ状の生地で餡をくるんだものが「関東風(長命寺)」、もち米を蒸して作った生地に餡をくるんだ「関西風(道明寺)」となっています。関西風はおはぎのような食感を、関東風はもちもちした食感を楽しむことができます。

見た目と食感の違う2つの桜餅、見かけた際はぜひ召しあがってみてください。

 

■新緑が光り輝く「夏」

春を「生命の誕生」というのであれば、夏は「生命の力」。木々の緑が濃く茂り、日の光を浴びた植物が咲き乱れる。川の水にも日の光が反射して、輝く姿はとても美しいです。

四季のなかで、生き物の生命力を一番感じることができる夏。この時期の和菓子にも、それが表現されています。

清流を力強く泳ぐ鮎の姿を模った和菓子「若鮎」を紹介します。

若鮎

5~8月に旬をむかえる鮎の姿を模った、可愛らしい和菓子になります。小麦粉で作ったもっちりとした生地に、求肥や小豆など販売されるお店で中身が違うところも魅力です。

生姜汁を加えた若鮎もあり、爽やかな味わいとなっています。夏になると水菓子が目立ちますが、若鮎で涼を感じながら楽しむのも素敵です。和菓子屋を巡って、若鮎の食べ比べもしてみてください。

きっと、、あなたの好みの味に出会えるはず。

 

■葉が赤や黄色に色づき始める「秋」

強い生命力を感じさせ輝いていた葉の緑は、赤や黄色に色づき始め秋の訪れを教えてくれます。

秋は「実りの秋」と呼ばれていることもあり、和菓子の材料として使われる食材も豊富です。特に、秋といえば「栗」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。使い方によってさまざまな表情を見せる栗は、この季節に重宝されています。

そんな秋を代表する栗を堪能するのであれば、栗蒸し羊羹はいかがでしょうか。

栗蒸し羊羹

片栗粉と小麦粉、小豆などを合わせた生地に、砂糖でじっくりと煮詰めた大きめの栗を入れて蒸しあげます。ほのかな甘さともっちりとした食感がクセになる栗蒸し羊羹は、寒天を使って作る通常の羊羹とは違った美味しさがあります。ゴロっと大きめの栗が入っているのも注目すべきポイントです。栗の旨味が凝縮された栗蒸し羊羹を、ぜひ一度召しあがってみてください。

 

■静寂の季節を迎える「冬」

色づいていた葉が地面に落ちると、静寂の季節がやってきます。

カサリと枯れ葉がなる地面の下では、次の季節へむけて静かに、ゆっくりと歩みを進めているのでしょう。それは、和菓子にも同じことが言えます。冬の和菓子は、贈り物用や新しい年を祝うものが多いです。

そのなかでも、新年を祝う和菓子として「花びら餅」が有名ではないでしょうか。

花びら餅

「初釜」と呼ばれる、年始めのお茶会で出されることが多い花びら餅。甘く炊いたゴボウと白みそ餡を、薄くて丸い皮で包んだ和菓子です。皮は求肥や外郎などが使われていて、お店や地域によって異なります。

口に入れると、白みそ餡の風味とゴボウの食感が面白い、おめでたい和菓子です。

今年は花びら餅を用意して、新しい年を迎えてみてはいかがでしょうか。

 

■おわりに

それぞれが魅力的で、違った一面を見せてくれる日本の四季。その一番美しい瞬間を切り取り、表現することができるものが和菓子です。美しさを目で感じ、口に含むことで味と舌触りを楽しむ。鼻から抜ける香りからは、季節を感じることができるでしょう。また、お店で購入するのもいいですが、自分で手作りするのも楽しいかもしれません。

小豆や栗を炊く音など旬の素材を調理することにより、耳でも季節を感じることができます。このように、五感全てで季節を感じながら食べることができる和菓子は、日本が世界に誇れる文化の一つと言っても過言ではありません。

普段何気なく口にしている和菓子ですが、ただ食べるのではなく五感を使いゆっくりと楽しんでみてください。