茶道でいただく2月の主菓子を紹介

茶道でいただく2月の主菓子を紹介
2020年2月13日 白玉椿
In 和菓子/スイーツ

お正月の華やいだ空気が少し前のものに感じられるようになった頃、「今年ももう一月過ぎたのね」等と口にしながら迎える2月。2月に入るとすぐに立春です。まだまだ寒い日は続くものの、日の光は春の光に変わりつつあり、茶道の世界でも春の訪れを意識した趣向へと移りゆきます。

今回はそんな2月を代表する主菓子を紹介します。

 

未開紅(みかいこう)

 

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未開紅(みかいこう)は、紅梅の蕾が開こうとしている姿が銘となっている、練切又はこなしでこしあんを包んだお菓子です。
紅梅を思わせる鮮やかな色が美しく、上から見ると真四角に近い形をしています。この形は、正方形に整えた生地の真ん中にあん置き、風呂敷のように四隅から包むことで作られます。

生地の真ん中には黄色いしべが添えられます。包んだ生地にすき間があるのは、蕾が開こうとしているから。よく見ると生地の内側は一段薄い色をしていて、赤やピンクの生地と薄い色の生地を重ねていることが見てとれます。

黒文字でいただくと、その断面から生地の色の濃淡がさらに明らかになり、濃淡2色の生地を重ねることで、梅の花びらの重なりを表していることが分かります。

このお菓子の銘は特定の品種を表したものではないようですが、梅の品種にも「未開紅」というものがあります。花が開くのを待ちながら、まだ咲いていないその姿をも愛でるのは、日本らしい感性といえるでしょう。

2月によく見られるお菓子ですが、鮮やかな色合いと梅の持つおめでたい意味合いから、お正月の席で出されることもあります。

 

椿餅(つばきもち)

 

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椿餅(つばきもち)は、炉の季節(11月~4月)の茶室ではお馴染みの、椿の葉を用いたお菓子です。関東よりも関西の方が、より馴染みがあり多く見られるようです。

あんを道明寺生地で包んだ餅を、椿の葉で包んだ餅菓子です。関西風の桜餅(道明寺桜餅)が桜の葉ではなく椿の葉で包まれている、というと想像がつくのではないでしょうか。道明寺生地の色は、白、薄茶色、茶色が多く、時折ピンク色のものも見られます。

椿の葉は、厚みがあり桜の葉のようには餅を包むことができないため、2枚の葉で餅を挟むように包みます。この2枚の椿の葉は、そのままの形のこともあれば、葉先と根元を少しずつ切り落としていることもあります。道明寺生地は肉桂(にっけい。「ニッキ」とも)で香りづけされています。また、普通の道明寺粉ではなく煎った道明寺粉を使うお店もあり、そのような椿餅では、肉桂の香りと共に香ばしい香りも楽しめます。

分厚い椿の葉ですから、葉は外して餅のみをいただきましょう。

椿餅は「つばいもちい」として源氏物語にも登場し、若菜上の中で蹴鞠を終えた若者たちが口にする場面が描かれています。なお、この「つばいもちい」は、見た目は現在の椿餅に似ていても、あんは入っておらず、味は異なるものであったと考えられています。

 

鶯餅(うぐいすもち)

 

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鶯餅(うぐいすもち)は、春告げ鳥と呼ばれる鶯を、その色と形で表した餅菓子です。江戸時代の書物にもその名を見つけることができ、今でもこの季節を代表するお菓子となっています。

あんを餅で包み、青きな粉(青大豆の粉)をまぶしたもので、両端を少し尖らせた楕円形をしています。

餅は、求肥や羽二重といった、柔らかくきめ細かな生地を用いることがほとんどで、青きな粉とあいまってふんわり優しい口当たりが楽しめます。両端をつまんで尖らせているのは、くちばしと尾を表しています。実際の鶯の色は黄みの強い黄緑色ではありますが、鶯餅の色は青きな粉の色のためやや青みがかった薄い白緑色をしています。

時折、抹茶や青海苔等を使って、より本物の鶯に近い色を出しているものも見られます。餅自体に色をつけるのではなく粉をまぶしていることが、目で見ても柔らかな質感が感じられ、鶯らしさを演出します。

練切等で分かりやすく形作られた鶯も可愛らしいものですが、鶯餅は、色と形のみで鶯を思わせ、日本らしい表現といえるのではないでしょうか。

菓子器や懐紙に梅が描かれたものを用いると、梅と鶯の景色が生まれ、より季節を感じられます。また、共に並ぶことはなくても、鶯餅の後に梅の絵柄のお茶碗で薄茶をお出ししても、茶道の世界らしいおもてなしとなります。