頭の側面を刈り上げた奇抜な髪型にハットをかぶり、茶道具に手を伸ばしている男性、梅原宗直さんは、茶道の入り口を広げ、魅力を発信しようと活動しています。「とにかく格式高いというイメージを払拭できたらと思って」と話しながら、岩出市にある自らの茶室でにっこりとほほ笑んでいます。
小学校から柔道一筋。しかし17歳のころ、祖母がたしなんでいた茶道に興味を持ち、一緒に教室に通うことになったそうです。「柔道をはじめとする武道には『動と静』がある。茶道をかじって静の部分を磨こうと思った」
しかし、「かじるだけ」だったはずの茶道は「やればやるほどおもしろかった」。知らず知らずのうちにのめり込み、柔道で相手の動きを冷静に見ることにも役立ったようです。
大学まで柔道と茶道を続け、卒業後は建築の道へ。「武家点前」の皆伝も取得しました。しかし、30歳を前に茶道で生計を立てようと決意。「茶人」へ転身した経歴を持ちます。
「30歳を過ぎると建築の仕事をだらだらと続け、抜け出せないだろうと思った。いい節目でした」
ただ実際に開催した教室などでは、「お金がかかる」「花嫁修業の一環」などという世の中の茶道に対する見方に驚いたそうです。
「これだけじゃ、食べていけない」と危機感を抱き、茶道のイメージを変えることから始めようと思った梅原さん。まずは茶道教室などで、できるだけ多くの人に気軽に茶道具に触れるよう勧めることから始めました。「触れて感じてもらうことで、親しみを持ってもらえるようになる」との考えからです。
クラブ音楽などとのコラボレーションも企画。流派や形式にとらわれず、入り口を広げて茶の世界を堪能できるよう心がけてきています。「体験から経験につながることが大事」と力を込めます。
自身は「来て楽しんでもらえる茶室の空間作り」を心がけていると話します。「『一期一会』はお茶の世界の言葉なんです。亭主、客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味しているんですよ」。「異色の茶人」は「人との縁をつないでくれる」という魅力を持った茶を、これからも多くの人に点て続けます。