茶道の茶会で和室に入ると、花が飾られています。
茶道の世界では、茶道具のひとつとされているのが茶花(ちゃばな)。
茶花とは、茶室の床の間に飾られる花のことです。
千利休の言葉に「花は野にあるように」とあります。
茶道では、いけばなのように剣山などを使わず、花入れ(花瓶のようなもの)に、花が自然のままに咲いているように生ける「投げ入れ」が基本です。
今回は、その「投げ入れ」について、季節によってどんな花が使われるのか?どうやって花を生けるのか?ご紹介します。
投げ入れで使用される花
投げ入れで使われる花は、例えばバラのように棘のある花、百合のように香りが強い花は、禁花とされています。
その他、名前の悪い花、花の色が毒々しいものも禁花とされています。
千利休の弟子とされる南坊宗啓(架空の人物という説も有)が記した「南方録」にも、茶花としてふさわしくないものに関して以下のような記述があります。
花生にいけぬ花、狂歌に、
花入れに入れざるはちんちやうげ
太山しきみにけいとうの花
女郎花ざくろかうほね金銭花
生けない花として、香りの強い花、名前が悪い花などが挙げられていますね。
では、投げ入れで使用される、季節の花をご紹介します。
ここでは、有名で一度は聞いたことがあるのではないかという、代表的な花を挙げていきます。
1月 |
水仙・椿・牡丹・福寿草 |
2月 |
木瓜・ふきのとう |
3月 |
猫柳・菜の花 |
4月 |
雪柳・ハナミズキ・こぶし |
5月 |
藤・菖蒲・杜若 |
6月 |
紫陽花・あざみ |
7月 |
朝顔・昼顔・露草 |
8月 |
木槿・葛 |
9月 |
芙蓉・萩・ススキ・藤袴 |
10月 |
竜胆・野菊・秋桜 |
11月 |
錦木の照葉 |
12月 |
南天 |
11月・12月は寒い季節なので花も少ないですが、11月の照葉の寂しさ、南天の赤い実は厳しい冬を感じさせ、とても情緒があります。
茶室に飾られている花を見るだけで、季節を感じられる、それが茶花なのです。
投げ入れで使用される花入れ
花を生ける花瓶のようなものを花入れといいます。
花入れは炉の季節・風炉の季節によって変わります。
11月~4月の冬季に使われる炉とは、畳の下に備え付けられている小さな囲炉裏(いろり)のことです。
5~10月頃の夏季に使われる風炉とは、畳の上に置く卓上コンロのようなものです。
炉の季節は備前や伊賀、信楽などの焼き物、風炉の季節は籠の花入を使用します。花入れはその他に金属や竹製のものもあります。
また、花入れには置き方があり、
・中釘や床柱の花釘に掛ける「掛花入」、
・床の天井や落掛などから吊る「釣花入」
・床に置く「置花入」
・掛物と花を同時に飾る「双飾(もろかざり)」
があります。
釣花入とは、東南アジアで食器として使われていたものを、茶人により花入として取り入れられたものといいます。
食器を花入れにするなんて、当時は斬新だったのではないでしょうか。
投げ入れの生け方
投げ入れで使われる花入れは、一輪挿しのものは入り口が狭いので、そのまま花を挿せばOKです(自然のままにただ挿す、というのが難しいのですが)。
しかし、入り口が開いている花入れには少し工夫が必要です。
花材の中から、しっかりした枝あるいは茎を花入れの直径に合わせて2本切り、それをクロスして花入れに入れます。
これを「丁字留め」といいます。
こうすることで花を生けるときにバランスがとりやすくなり、美しく花を生けることができます。
枝を切るときは、まず花入れの直径よりも長めに切り、少しずつ微調整していくと上手くいきます。
(枝や茎がちょっと短くても花入れの中の水に沈んでしまって、苦労した覚えがあります!)
また、「花は野にあるように」生けるのが良いと利休は言っていますが、花材を選ぶ際はまっすぐな枝ではなく、わざと曲がった枝を選んで躍動感や荒々しさを表現することもあるそうです。
また、蔓がある花(朝顔等)は高さのある花入れを選んで蔓が垂れるように生けたり、釣花入に生けて蔓を生かすよう生けたりします。
このようにちょっとしたテクニックで、花を美しく見せ、もてなしをするのですね。
最後に
茶道の投げ入れについてご紹介しました。
季節によって使われる花や花入れが変わり、茶道の奥深さを再確認しました。
茶室にあるもので、花は唯一命があるものと言われています。
それだけ、茶道において花は特別なものです。
茶会では、花があることで空間が完成するので、茶会に参加される機会がありましたら、ぜひ花にも注目してみてくださいね。