お茶室の床の間にお花やお香と一緒に掛け軸が飾られていますよね。お茶室のみならず、和室の床の間には掛け軸がある場合が多いですので、特に気に留めず見ているという方も中にはいらっしゃるかもしれません。
ですが、お茶室の掛け軸には実はきちんと意味があるということをご存知でしたか?お花やお道具と同様、季節感を出すためにも使われる、お茶室の掛け軸の意味を今回はご紹介いたします。
なぜ掛け軸を飾るのか
掛け軸はお茶席において、お花やお香、お茶碗などとともに季節感を出すためのお道具として用いられます。一般的な掛け軸は絵が描いてあることが多いため、掛け軸で季節感を出すというと、季節のお花などの絵が描いてある様子を想像しがちですが、お茶席で用いられる掛け軸には絵ではなく言葉が書いてあるものが多くあります。掛け軸に書かれている言葉によって季節感を出すのですが、その具体例については後程ご紹介いたします。
季節感を出す以外にも、亭主がお茶席にかける思いやなどが書かれているものも多くあります。「このようなお茶席にしたい」「このように楽しんでいってほしい」という思いが、掛け軸を見るとわかるようになっているのです。
茶道具の中でも最も格式の高いもの
ところで、掛け軸はお茶席のお花などに比べて派手さがないためあまり目立ちませんが、実は茶道具の中でも最も格式の高いものとされています。お茶会に出られたことがあれば、お茶室に入ってまず床の間に一礼した経験があるのではないでしょうか。
格式の高いお道具である掛け軸はお茶室に入って最初に鑑賞するところですが、その意味を知っていればその日のお茶会の趣旨がわかったり、季節感を感じたりと、よりお茶席を楽しむことができますよ。
一年中使える掛け軸
お茶席への思いや、季節感を表す掛け軸ですが、まずは季節に関係なく使える掛け軸からご紹介いたします。
掛け軸に書かれている言葉の多くは禅語。禅語とは、禅の精神や教えについて記した言葉のことです。お茶席の亭主がその日のお茶会やお客のことを思って選んだ禅語の掛け軸には、日常について何かハッとする言葉が書かれているかもしれませんよ。
日日是好日(にちにちこれこうにち)
2018年公開の映画のタイトルとなったことが記憶に新しいこのことば。「にちにちこれこうじつ」と読むこともあります。「毎日が大切である」というものと、「その日に起こったことの良し悪しにかかわらず、ありのままのその日をいい日と受け入れる」というものの2通りの解釈があると言われています。
どちらの意味にしても、1日1日を大切にし、一喜一憂せずにただひた向きに頑張ることの大切さを説いてくれているという点では同じです。何か落ち込んだことがあったときには気を持ち直すきっかけに、浮かれているときには気を引き締めるきっかけになる言葉ですね。
和敬清寂(わけいせいじゃく)
日日是好日と同様に、こちらもお茶席でよく目にする掛け軸です。千利休の時代から大切にされてきた言葉で、亭主と客が互いに心を開いて敬い合い、清らかな心身で動じないさまを表しています。
茶道には、お茶席に入る際のルールやマナー、お点前などの決まりごとが沢山ありますが、本当に大切なのはお茶席を通じて互いに心を通わせること。この掛け軸がお茶席にかけてあるのを見ると、改めてお茶席での大切なことに気づくことでしょう。
一期一会(いちごいちえ)
日常でもよく使われる言葉、一期一会もお茶席の掛け軸によく書かれている言葉です。実はこの言葉自体が茶道が発祥だと言われているのをご存知ですか?意味については、多くの方がご存知のとおり「一生に一度」。この時間は一生に一度きりであるから、しっかりとおもてなしをするという亭主の心遣いを表すこの掛け軸。
お茶会でこの掛け軸がかかっているのを見ると、自分が客として歓迎されているんだなあと嬉しく思いますよね。亭主のおもてなしの心を知ると同時に、客側にもこの時間を大切にしようと思わせてくれる言葉です。
円相(えんそう)
円が描かれた掛け軸がお茶席にあるのを見たことはありますか?一筆で書かれた円が描いてあるだけの掛け軸は意味について少し疑問に思うかもしれませんね。こちらは円相と呼ばれるもので、禅の考え方において悟りや宇宙について表したものと言われています。始まりがなく終わりもない円相については、見る人によって解釈が異なるものでしょう。
欠けたところのない円にお茶席の緊張感を重ねる方もいれば、何事も丸く収まっている落ち着いた様子を表していると感じる方もいるかもしれません。そのときのご自分の心の状態によって変わる円相の見え方に是非面白味を感じてみてくださいね。
季節感を出す掛け軸
最初に、季節感を出す道具の1つとして掛け軸が用いられるとご紹介いたしました。例えば、冬に飾る掛け軸には「無事」という言葉が入っているものが多いなど、お茶席の亭主やお稽古の先生も季節感を意識して掛け軸を選ぶことがよくあります。
季節を感じられる掛け軸は沢山ありますが、その中から比較的目にする機会の多い掛け軸を春夏秋冬に分けてご紹介いたします。
【春】春光日々新(しゅんこうひびあらたなり)
春の景色は日に日に変わり、毎日が新しい日であるという意味です。1-3月頃に用いられる春の掛け軸ですが、なんとなく同じような毎日を過ごしてしまう時期に新しい気持ちにさせてくれる言葉です。書かれている通り、この時期の景色は目まぐるしく変化していきます。お茶席でもお花やお茶碗などから季節を感じ取ってくださいね。
【夏】山是山水是水(やまはこれやまみずはこれみず)
4-6月頃の夏(現代の春)や、7月8月の暑い時期の掛け軸に用いられる言葉です。山は山、水は水で、お互い別のものでありながら、一緒に自然を形成しているという意味です。山や、水という言葉から涼しさを感じて取れますね。人もみんな、自分は自分で他の人にはなれませんが、誰もがありのままの状態で他人とのバランスが取れているのだと気付かせてくれます。自分は自分でいいのだと認め、温かいお茶を飲む時間はきっと心落ち着く時間となりますよ。
【秋】心静即身涼(こころしずかなればすなわちみずすずし)
7-9月頃に用いられることの多い掛け軸の言葉です。「涼」という文字が入っているため、なんとなく暑い時期にも爽やかな気持ちになれる言葉ですよね。意味は、心が落ち着いていれば体もすっきり涼しい状態にあるというもの。新しいお茶室ですとエアコンも完備されていますが、以前はエアコンがないお茶室がほとんどだったでしょうし、今もそのようなお茶室があるかもしれません。気持ちを落ち着けて過ごしていれば、暑さも気にならい、そんな言葉をお茶室に飾ることで、少しでも客が過ごしやすくなるようにという亭主の心遣いが見える掛け軸です。
【冬】歳月不待人(さいげつひとをまたず)
その年の終わりの12月頃の掛け軸に用いられることがよくあるこちらの言葉。日常生活でも使うことがあるかもしれませんね。この言葉の意味は、「歳月は人を待ってくれない」というそのままの意味ですが、元々の漢詩では「だから今を楽しもう」という意味の言葉が続きます。今の一瞬一瞬を大切にしようと改めて思えたり、今年ももう終わりだけれどやり残したことはないかと自問したり、年の瀬に飾るからこそ新たな発見のある言葉だと言えますね。
掛け軸の意味を知っていればよりお茶への理解も深まる
お茶席における掛け軸には色々な種類があり、今回ご紹介できたのはほんの一部です。お稽古の際には先生に掛け軸の意味を尋ねてみたり、禅語を学んでみたりすると、よりお茶への理解も深まりますし、お茶席以外の日常生活に関しても何か自分の心にぴったりと合う言葉に出会えるかもしれません。
掛け軸の意味を知っていれば、お茶席に呼ばれたときだけでなく、自分が亭主としてお茶席を設ける際にも役に立つものです。お稽古の際やお茶会の際にはぜひ掛け軸にも注目してみてくださいね。
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